ミシュラン星☆St. John で肉を堪能

こちらの記事は2012年の再掲です。多少情報が古いことをご了承ください。

大人気のレストランSt. John

大英博物館をたっぷり1日楽しみ、さて最寄り駅のホルボーンから地下鉄に乗ろうかと思ったら、見て見て~、この人の波!なんじゃこりゃ!

ロンドン名物、交通トラブル

アナウンスがよく聞こえなかったけど、改札の機械が何かのトラブルで使えないだとか、警備システムのためだとか、周りの人たちがぶーぶー言ってる(でも英国人はきちんと待つ)

何かにつけぶっ止まるので有名なロンドンアンダーグラウンドだけど、私がいる日に止まらなくてもいいじゃないか。

近場のバス停からセントパンクラスまで出て乗り換えようかと思ったけど、しばらく待ってると少しずつ動き出したので、列に加わった。ロスタイム30分。ロンドンではこんな事はしょっちゅうなんだと思う。でも、待ち合わせの時間まであとわずか。5分前行動のジャパニーズにとっては、痛い遅れである。

バービカン駅から徒歩圏

しかし何とかお友達のYちゃん&Cちゃんと合流。バービカン駅から予約してもらっていた「セント・ジョン/St. John」に向かう。この辺はロンドンでいちばん大きな肉市場があるエリアで、その流れからかセント・ジョンも売り物は肉!

それも、ただの肉ではなく「ゲイム=game」と呼ばれる狩猟肉や、内臓、皮など、あらゆる部位を、産地と肉質にこだわり提供するという。

さらには、2009年のミシュランでひとつ星を獲得。気楽な店構えと手ごろなプライスで、昨今飛躍的に美味しくなったと言われるロンドンのレストラン界を牽引しているとなれば、これは普段あまり肉を食べない私でも、期待が高まるのは当然のこと。

当然、日本から行く旅行者には予約が取りにくいレストランなのだが、現地でアーティストをしている、食通のYちゃんが素晴らしい候補をいくつも並べてくれて、その中からチョイスさせていただいた。(ありがとー、Yちゃん)

あらゆる部位の肉をいただく

名物の「骨髄」からスタート

さて、まず最初にいただいたのは、この店でほぼ全員がオーダーするであろう「骨髄サラダ(roast bone marrow salad)」。

サラダと言っても野菜はちょっぴり。写真上側の筒が牛の骨、中にあるのが骨髄だ。こんがりとローストしてあり、脂とゼラチンがトロトロになっている。日本ではほとんど食べない部位だが、西欧では焼いたりポトフに入れたりして食べるのだとか。

この店の場合は、これをスパチュラでかき出し、こんがり焼かれたトーストの上にのせていただく。緑色の野菜はイタリアンパセリ。ちょっと癖のある香りが、骨髄のこってり感を消してくれる。

一本の骨の中に入っている骨髄の量はほんの少し。それでも、かなり濃厚なので一皿をひとりでは厳しいかもしれない。味のほうは、飲み込んだ後に肉の脂の甘みとにおいが、喉の奥にがっつり広がる。

ちなみにワインは「ガルナッチャ(Garnacha)」をチョイス。英国読みではグルナッシュ。ちょっと若いが素直な味で美味しかった。

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お次は仔牛のブレイズド

二皿目は、子牛の蒸し焼き。イギリスではブレイズドという調理法になるようだ。アメリカではポットローストだろうか。

赤身の上品な味わいで、ジュースがしっかり閉じ込められている。ベリー系のソースと、ホースラディッシュのタルタル、どちらも繊細なな味付けだった。

量的にも、イギリスの伝統料理からは大きくイメージ脱皮しているのがわかるだろう。グダグダにゆでられた野菜とともに、ドーンと焼いただけの肉のかたまり、そして「あとは勝手にやっとくれ」と並べられる調味料たち。そんな昔風のイギリス料理の面影はない。

ええっ「アヒルの心臓」だって

次なる皿は、「何か本日のスペシャルはないか」と聞いて、これはどうだとすすめられた、「ダックハート」、すなわちあひるの心臓である。

日本でも心臓は、焼き鳥屋や焼肉屋でよく出されるが、アヒルは初めてだ。大きさは親指の先をひとまわり大きくしたくらい。ソテーしてグレービーっぽいソースで仕上げてある。日本人好みの味付けだと思う。そして素晴らしい食感!

鶏のハツもそうだけど、もちもちとしたゴムのような弾力があり、噛むとわずかにチキンではない濃厚なアヒル肉の香りがする。おつまみとしては優秀だと思う。いかんせん、量が少ないが・・・。

ザ・英国「ウェルシュ・レアビット」

そのとき、香ばしい香りをさせてやってきたのが「ウェルシュレアビット」。ウェールズ風チーズトーストである。これ、メイン料理のカテゴリーになるんだって。熱々をみんなで急いでわけていただいた。これは美味しいわ~。ここ来たら絶対に食べたほうがいいわ~

実はこの料理、大好きなクリスティの小説にも登場する、伝統的なイギリス料理。チーズをエール(ビール)で煮溶かして、トーストに塗ってオーヴンで焼く。最初は「え、ビール?」と思ったが、自分で作ってみたら、これが美味しい!濃い色のビールでもいいけど、赤ワインに滅法合うので、おすすめ。ただし、冷めるとまずいので焼き立てをどうぞ。

ゲイム肉の代表、鴨ロースト

こちらはスタンダードな鴨。ゲイム肉料理が専門のこの店にとっては、本領発揮の一品だろう。調理法もシンプルに。ほぼ塩と胡椒(たっぷりめ)の味付けで、皮目からパリッと焼き付けたロースト。ちらっと見える中身はレアでジューシーだ。

これはもう、素材が良いというのがよくわかる。臭みもなく、程よい弾力の鴨肉。これとワインでご機嫌にならないはずがない。特に皮が香ばしくて美味しかった。脂もしっとり甘い。

ちなみに真ん中あたりでピコッと立ってる紫色のものは、アーティーチョーク。いつもは茹でたものを歯でガシガシ引っ張って中身を食べるけど、これは中身を取り出してあるのか?言われないとわからない食感だった。

ここんちはパンも超うまい

2種類のパン。こちらの店はパンも有名で、わざわざパンだけ買う人もいるようだ。私はどちらかといえば、パンよりご飯のベタな日本人だが、小麦粉の味がしっかりする、このパンは非常に気に入った。

なにしろこちらに来てから食べたパンは、ホテルの朝食のカリカリ薄切りトーストか、デリのサンドイッチくらいで、こういうちゃんとしたのは久しぶり。バターをつけないほうが美味しい気がした。

焼きたてマドレーヌの誘惑♡

さて、デザート!なんとここでは焼きたてのマドレーヌが食べられる。それはいっとくしかないでしょうと、半ダース注文!

キッチンから甘いにおいをさせて運ばれてきたマドレーヌ、サクサクとした表面と、ほわっとした中身が、まさに焼きたてのコントラスト。素朴な甘さで美味だった。ごちそうさま!

St. JOHN
St. JOHN

素敵バー「鶴亀」(閉店)

食事の後、Yちゃんの知り合いの店「鶴亀」に連れて行っていただくことに。彼女はアーティストをしながら飲食関係の仕事もしていて(現在はアートひとすじ)、その関連の日本食&美味しいお酒が楽しめる一軒らしい。

やっぱりここはウイスキーでしょう

食肉店の並ぶ通りを、ぶらぶら歩く。こっちは肉屋さんでもショーウィンドウを芸術的に飾っているのが素晴らしい。見て、この包丁のすごいデカさ!お肉もおりこうさんに寝ていますw

鶴亀の店長さんは、若いがウィスキーに詳しい方で、私がアイラ好きだというと、ロンドンでしかなかなか飲めないレアものを出してくださった。

まずはこいつ。「Cl」シリーズは日本でもわずかに売られていたけど、数か少ないしすぐ完売になった幻のアイラ。番号や記号で醸造所を示すのは、ソサエティウイスキーの世界でもおなじみだ。この酒も、蒸留所が樽をいくつか選んだ中からヴァティングし、味に納得すれば発売するという、職人の意地が炸裂する一本。

もちろんCLは「カリラ」である。いつも飲んでるのより、少しピート臭が強烈。でも甘~い!もちろんストレートでいただいた。鼻で嗅ぐのとまた違う、飲み込んだ後の余韻がたまらない。あー、やっぱりアイラが好きだ!

こちらは有名なラフロイグ。常に家に置いてあって、カスクストレングスとかも飲んでるから慣れてると思っていたけど、こちらは口に含むとシャープなパンチがやってくる。

アルコール度数も少し高いのだろうか。切れ味がよい、日本酒でいうと淡麗辛口系のラフロイグ10年。同じアイラでもそれぞれの個性を愛でながら飲むのも、非常に楽しい。

日本ではウイスキーのファンというのは、英国に比べれば小数だろう。こちらでは珍しいウイスキーを専門に扱う店も多く、値段も日本では考えられないほど安い。

ただし反対に日本酒がべらぼうに高く、知識のある人も少ないようだ。いまビジネスを考えるなら、日本酒のEU圏への輸出は将来性があるとしみじみ思った次第。

※「鶴亀」はこの訪問の後、残念ながら閉店してしまったそう。またいつか素敵なバーに出会えますように…

真夜中のロンドン交通事情

帰りは地下鉄の時間ギリギリになったが、ダッシュで何とか間に合った。やはり最終はロンドンも酔っ払いが多い。そして、終電が終わると「ナイトバス」という深夜運行バスが、ロンドン市内を走る。運行本数と行き先に限りはあるが、遅くなった人には便利なサービスだ。

乗換駅のレスタースクエアで、「HYPER JAPAN」なるイベントの告知ポスターを見かけた。どら焼きや寿司、法被はいいとして、やはりそのメインはコスプレやアニメなどになるらしい。

確かに現代日本の一部だとは思うが、今を築いてきた歴史や伝統を、コスプレで日本を知った若者が、これをきっかけに知って欲しいと願ってやまない。