光と祈りの聖地、マティスの教会へ

ヴァンスの街へやってきた

前回の記事でご紹介したサン・ポール・ド・ヴァンスのバス停から、来た方向と同じ400番バスに乗ってヴァンス(le village de Vence)へ。これはパスが効かないので、1.5ユーロ必要。10分くらいであっという間にヴァンスに着くんだけど、降りたところが「ここはどこ?」状態。観光地というより、殺風景な地方都市のオフィス街風味?

バス停から旧市街までは遠い

後でわかったけど、ヴァンスはバス停と旧市街がずいぶん離れている。ヴァンスだけの地図ではつかみにくいので、バス停からのアクセスをひつこく記すことにした。これで迷ったら後は知らん(ヲイ

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まず、上の地図の左側の丸いのがロータリー。ここがバス停になっていて、大きい道路側から見たらこんな感じ。

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ここからさっきバスが来た方を見渡すと、ロータリーを軸に二股になっているので、バス通りじゃない方の道を直進。「村」と書いてるのは旧市街のこと。

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左手にMonoprixを見ながらさらに直進し、けっこう歩くと右側に大きな公園が見える。そこがヴァンスの村、旧市街の入り口で、道を挟んで公園の反対側に観光案内所がある。ここで詳細なヴァンスの地図をもらえる。

ようやくランチにありつく

ここらでいいかげんお腹すいてきたので、とりあえず旧市街に入ってレストランを探したが、なんか寂しげな様子で閉まってる店も多し(オフシーズンの平日だからね)。

仕方がないので観光案内所の隣のピザ屋に入って適当にサラダ頼んだら、なななんと20ユーロ以上するよww ワインを一杯つけて約30ユーロ。寒いテラスで凍えながらいただいた。

お味は…うーむw バスクっぽい名前のついたサラダを頼んだのに、タプナードのついたラスクやアンチョビ入ってて、結局サラダニソワーズの兄弟だったという(笑)HANgoûtの料理で慣らされた舌には、当然美味しくないのであった。ある意味不幸?

旧市街は数百年前の世界

フランスのあちこちにある旧市街。16~18世紀の町並みが温存され、今も人々が生活する。中には観光地化しているエリアやゴーストタウン化しているエリアもあるが、昔の絵に描かれた風景が、そのまま残っているのは耐用年数の短い木造建築の国、日本からすると驚異的と言わざるを得ない。

ヴァンスの旧市街は、非常に小さく、サン・ポールよりも静かだ。店もぽつぽつとあるくらいで、一般の住居の割合が高いと思われる。ドアの前で切なげに鳴いていた猫ちゃん、無事に入れてもらえたんだろうか。猫のいる町は良い町だ。

この市街の北側から、丘を下りてマティスの教会へと向かう。徒歩10分とも15分とも情報があったが、さて…。

坂道を歩いてマティスの教会へ

「マティスの教会」こと「シャペル・ド・ロザリオ/La Chapelle du Rosaire(ロザリオ礼拝堂)」。ヴァンスの北側、国道沿いにある小さな教会へはツアーバスで行く人が多いが、私のような個人旅行者はレンタカーか歩いて行くしかない。

かなり歩く。覚悟していこう

私は今回、旧市街の北側から北上するルートを取ったが、これが滅法きつかった。くねくねガタガタの坂道が延々と続く。フランスの田舎あるあるだ。

旧市街からこの郵便局の前のヘアピンカーブを曲がる。地図の中の赤い丸印が、写真のポイント。ここから坂を下りて川を渡り、坂を登ってたどり着く。

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なめていたが、このルートはけっこうタフだ。特に最後の住宅街の坂道など、途中で何度も休みながら30分。ガイドブックや旅ブログには15分くらいと書いてあるが、みんな若いのだろう。足の弱い方には、このコースはおすすめしない。かえってバス停から遠回りで国道沿いに歩いたほうがいいかもしれない(実証なし)

思ったよりも小さな教会

そしてようやく教会へ。様々な国の観光客が、こんな辺鄙な場所の教会へやってくる。みんなバスで来たようだ。小さな入り口を通って階段を下りたら、受付にシスターがいらっしゃるので、6ユーロ払って中へ。

さっき旧市街でランチを食べていた日本人の団体さんと一緒になって、大声でガイドさんの解説が始まったので、ちょっと雰囲気がでないw 静かに楽しみたかったが仕方ない……ちなみに撮影は禁止なので、画像検索結果を貼っておく。

Google画像検索結果

内部は淡い午後の光ではあったが、それは素晴らしい光景だった。本当にささやかな、小さな聖堂の中に、マティスの渾身の祈りがこめられていた。

マティスが最後の祈りを捧げた場所

白い壁に描かれた、様々な祈りに関するモティーフ、シンプルな線画から伝わる意志と憧憬の強さよ。そして青と黄色の補色による、静寂と光輝が一瞬にして視界を支配するようなステンドグラス。

圧倒的。まさに圧倒的なのである。そこにはマティスが模索しながら表現してきた世界観が集約されていた。

晩年、この地で祈りに道を見出したマティスが、自らの画家として生きた痕跡を、その魂とともに4年の歳月をかけてここに刻んだ。彼の祈りは永遠にこの聖堂の中に木霊している。

Chapelle du Rosaire 公式ウェブサイト

帰りもまた400番バスでニースへ

帰りも山道をゆっくりと、足をいたわりながら歩いて村へ戻った。田舎の澄んだ空気が心地よい。小高くなった場所からは、そこここに絵画のような風景が臨まれる。

フランスはエッフェル塔や凱旋門のイメージがある人が多いだろうけど、私は田舎が好き。人が優しいし、子供たちが元気だ。

帰りはまたバス停まで歩いて400番でニースへ。今度は7日パスが使えた。区間料金というより、そのバス停から出るバスがLignes d’azurと提携しているかどうかで決まるのだろう。不思議の国、フランス。