実力派ブション!Daniei et Denise

美食の街リヨンの誇る「ブション」

フランス随一の「食の都」、リヨンの中でも特筆すべきが「ブション(Bouchon)」の存在である。ブションとはもともとコルク栓の意味で、リヨンの伝統的な家庭料理を供するレストランを、そう呼ぶようになった。ブションを名乗るには細かい条件があり、そのお蔭で伝統の味が高レベルで保たれている。

認定マークのあるお店を推奨

しかし近年、本来のブションの形態をなさない店が増えたため、二つの認定マークが作られた。どちらもリヨンの人形劇「ギニョル」をデザインしたマークで、このどちらかがついている店に行けば間違いなく美味しいものにありつける。「食」に誇りを持つ、リヨンらしい自主規制である。

Daniel et Denise でリヨン名物を堪能

リヨンのブションで真っ先に名が上がる「Daniel et Denise(ダニエル・エ・デニス)」。本店はパールデュー駅の西側にあるが、旧市街サン・ジャン教会近くにも店があり、今回はこちらにお邪魔した。

またもや神谷シェフにお世話になりました

この日は偶然にも、ニースでお世話になった神谷シェフとクレールさん(※)がリヨンにいらしたので、お声かけいただき、私一人で突入する予定だったのが、賑やかに3人でのディナーとなった。というより「あ、予約の人数、勝手に増やしといたからね~」と言われただけなんだけど(笑)プロの料理人との食事は、大変勉強になるので、願ったりかなったり♡

※現在お二人はカーニュでレストランをされています>参照記事

Daniel et Denise Saint Jean(ダニエル エ デニス サン・ジャン)

アミューズからリヨン名物がいっぱい

まずアミューズからリヨン名物が並ぶ。「グラトン」(右)はカリカリに豚皮を揚げたもので、ブションでは「好きに食べて」とばかりドンとテーブルに出される「付出し」的なもの。

中央にあるのが同じくリヨンではどこにでもある「セルヴェル・ド・カニュ(絹職人の脳)」という、薬味入りとろりんチーズ。フロマージュブラン(フレッシュチーズ)にハーブやスパイスを入れたもので、家庭でもよく作られるそうだ。これをパンに塗って食べるとワインがすすむ。

前菜は、もちろんパテ・アンクルート

私と神谷シェフは、リヨンの伝統料理「パテ・アンクルート」。リヨンでは定期的にこの料理のコンテストが行われていて、この店は見事優勝を勝ち取ったそうだ。そりゃあ食べてみないわけにはいかないでしょう。

野性味あふれるパテが、しっかりしたボディのパイ皮に包まれ、焼成により生まれた空間には、濃厚なコンソメジュレ。これがまた旨い。こってりとしたチャツネをつけて、複雑な味のバランスを楽しむ。素朴なようで上級者向けの一皿だと感じた。

サラダもたっぷりご馳走レベル

クレールさんは、「あっさりめがいい」ということで、サラダをチョイス。かなりボリュームのある、贅沢な素材を使ったサラダだ。(ちらっとフォアグラも入ってる感じ?)

日本でサラダというと、副菜として小さい皿や小鉢で出てくる事が多いけど、欧州ではコースの前菜でも、こんなにたっぷりと出てくる。野菜の種類も、日本で主流の玉レタスはほとんど見かけず、柔らかな葉物に香りのあるハーブや、ドライトマト、豆、クルトンや肉類、魚類などがプラスされ、それだけで完成された立派な一皿になっている。

メインもブションならではの味を

いよいよメイン。私はリヨンに来たら絶対に食べたかった臓物系をチョイス。日本人なのに、私はなぜかジビエ、臓物、羊が好き。前世が狩人だったのだろうか。

アンドゥイエット3点盛で大満足

これはアンドゥイエット(臓物ソーセージ)の三種盛り。グラタン、コロッケ、ボイル。5ユーロ足して、旬のきのこ(真ん中の黒っぽいやつ)をプラスした。見たらわかるだろうけど、これはかなりのヘビーパンチ。

このグラタンの濃いこと、焼きのしっかり入っていること、はんぱない。臓物の匂いもきついので、興味本位で知らずに食べると後悔するぜ(笑)でもうまい、本当のフランス料理を食べてるという満足感!

リヨンを代表する一品「クネル」

こちらはクレールさんの召し上がった「クネル」。川鱒など白身魚をすり身にして、ふわふわのはんぺんみたいに仕上げた上に、たっぷりの「ソースナンチュア(ザリガニのソース)」をかけていただく。さらにオーブンで焼く店も。

このクネルはリヨンのブションを代表する料理で、どんな店もオリジナルのクネルをメニューに載せている。お味は、ふわっとした口当たりと、濃厚なザリガニのうまみが後を引く、見た目より何倍も洗練された(ごめんねクネルw)味わいの料理だ。

付け合わせもすごいボリューム

メイン料理の付け合わせとして、どーんとテーブルにやってきた、マカロニグラタンとポテト。マカロニグラタンは、本当にマカロニとベシャメルソースだけ。うす塩であっさり素朴な味。

ポテトはシェ―キーズのバフェに置いてあるような、香ばしいタイプ。私は細長いフレンチフライは苦手だけど、これなら1個くらいはぺろっといける(それでも1個でギブアップ)ちなみに神谷シェフは、血入りソーセージ「ブーダン・ノアール」をお召し上がり。見た目がちょっとアレなので写真はなしで(笑)

デザートは定番、梨とチョコ

デセールはもう入らないほどお腹がいっぱいだったけど、やはりオーダーしてしまう。別腹というより私の鎧のような皮下脂肪に吸収される仕組みのようだ。

洋梨のチョコレートソース、バニラアイスクリーム添え。見るとこってりしているようだが、実はこのチョコレートソース、甘味がごく控えめ。まったりと煮上げた梨の甘さとミックスされてちょうどいい甘さに。そういえば昨年パリでもチョコ×梨が出た。フレンチでは鉄板の組合せである。

プラリネは色が素晴らしくきれい

こちらはお二人が仲良くシェアして食べていたプラリネのタルトとアイスのデセール。リヨン名物、真っ赤なプラリネ。お味は聞いていないが、けっこう甘そうな…。(後日、プラリネは食べてみるとそこまで甘くない事を知った)

以上、うわさ通りに美味しかった「Daniel et Denise」。スタッフのサービスも非常にフレンドリーで、温かく気取らないムードの店内で美味しい食事がいただけた。リヨンらしい料理がそろっているので、観光客にもおすすめの一軒だ。