コートールド美術館から、テムズ川へ

こちらの記事は2012年の再掲です。多少情報が古いことをご了承ください。

素敵の宝箱「サマセットハウス」

ロンドン3日目。今日は薄日が差している。一階のレストランで、そろそろ飽きてきたブレックファストをいただき、本日は地下鉄テンプル駅にある、サマーセットハウス内「コートールド美術館」を訪ねることに。

テムズ川のほとり、ロンドンらしい風景

ロンドンという街は、真ん中あたりを横向きに流れるテムズ川によって分断され(というより川沿いに町が発展したのだろうが)、川の北側と南側、さらには西か東かで、アッパーやらロウワーやら、住民と文化の趣が違うのだそうだ。知らんがな(笑)

 

向かったサマーセットハウスは、テムズ川の北側、ウエストミンスター地区にあり、川っぷちに建っている。都心の繁華街からやや離れているせいか、町並みが整然として静かなムードだ。

建物は四角い塀で囲まれ、中庭には毎冬スケートリンクが設営される。この時はもう期間が過ぎていたが、今シーズンはティファニーがプロデュースして、夜は特にきれいだったらしい。ゴージャスだな~

ちなみにサマーセットの名は、サマーセット公爵から来ている。言うまでもなくこの地の所有者だった方だ。

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The Courtauld Gallery

中庭を突っ切り、さっそく「コートールド美術館」の中へ。見落としてしまいそうに小さなエントランス。地下にはコインロッカー式のクロークがあり、上階の展示室には螺旋階段で上がる。

小さいけど雰囲気のある美術館

「コートールド」の名の由来は、サミュエル・コートールドという財閥のコレクションを展示したことに始まる。

実はこのサミュエルおじさん、かなり先見の明があった方で、当時はあんまり流行ってなかった印象派、それも後に大家になるセザンヌやマネ、ルノワールなど、錚々たる画家の作品をコレクションした。それで、こんな小さな施設にとんでもない値打ちの作品群がうなっているのである。


上はクラナハの「アダムとイヴ」。本で見たことがある方も多いんじゃなかろうか。実に鮮やかなタッチだ。そして、下はもっと見たことありそうな、マネの「草上の昼食」。これは何点かバージョンが存在するはず。そのひとつがここにある。当時はショッキングな絵だったろう。あの時代に、しれっとやっちゃったマネはかっこいいと思った。

マネの最後の大作がここにある

美術館のパンフレットの表紙にもなっている、「フォリーベルジェールの酒場」は、マネの最後の大作なのだそう。

酒場の女性バーテンダーの物憂げな表情が、ミステリアスで切なく、妄想を膨らませる。鏡に映りこんだ人物はマネ自身だろうか。

こちらはゴーギャン。「テ・レリオア(夢)」と名づけられた作品。同じくゴーギャンで有名な「ネヴァモア(横たわるタヒチの女)」も展示されていたが、私はこちらが印象深かった。印象派は見ただけで誰の絵かわかるところがいいな。

ゴッホ、モディリアーニも…

ゴッホもさりげなく置いてある。

有名な耳のない自画像である。何度も写真では見たが、間近で見ると絵の持つオーラに圧倒されそうになる。この明るい色彩で、こんなに憂鬱な気分になるなんて。あまりに絵に語りかけられすぎて、時間がとまった気になった。

イギリスの小規模な美術館では、こんなお宝作品が、壁に無造作にかかっているのだ。囲いもなく、触ろうと思えば可能な距離で。これが日本との大きな違い。

ピンボケ失礼。モディリアーニの「裸婦」シリーズの一作。モデルは彼の妻となったジャンヌだ。モディリアーニは破滅的な生活を送り、貧困のなか結核で死んだ。その二日後にジャンヌは後追い自殺をしている。

この絵のように生々しい裸婦像は、当時はインモラルの最たるものだっただろう。しかし彼らの暮らしを本で読み知っていたせいか、ジャンヌは夫の才能を疑うことなく、この共同作業が幸せの形だったのかな、という勝手な印象が私の中にはある。

この他、小さな館内にはセザンヌ、ルノワール、カンデンスキー、ルーベンス、ロートレックなどがひしめいている。印象派の好きな人なら、ロンドンでは見逃せない一軒だろう。

ここの美しい階段はもはやアート

さらに館内には絵画以外のコレクションも充実している。

例えば、このような貴族文化を感じさせる銀器の数々。とても細工が精巧でゴージャスだ。その中で、面白いものを発見した。

これは何かと思いきや、なんとロウソクの火を消す道具。これではさんで火を消し、はさみの部分で芯を切る。いいとこのメイドさんは、私みたいにバフーッと吹いて消すわけじゃないのだ(笑)

これが館内を移動する螺旋階段。雰囲気あるでしょう。とにかく建物自体が美しく、静かにゆったり鑑賞するにはもってこいの施設だ。もしかしたらロンドンのギャラリーでいちばん好きかも知れない。きっとここはまた来る。

ちなみにこちらは国営ではなく民間のため、普段は£6の入館料が必要。ただし私が訪れた月曜午前~14時は、なんと無料で解放されている、非常に太っ腹な美術館だ。

ロープを張った順路もなく、自分の好きなペースで好きなだけ、間近で眺められ、さらにはフラッシュを使用しなければ撮影自由。もちろん模写もできる。 絵を愛でる環境はこうでなくてはいけない。

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おしゃれ!美味しい!Tom’s deli

このカフェ目的だけでも訪れたい
サマーセットハウス内には素敵な飲食施設がある。新進気鋭のシェフ、トムさんが手がける「トムズキッチン」と「トムズデリ」。
今回はお腹があまりすいてなかったので、デリでランチにキッシュをチョイス。けっこうなボリュームのサラダがついて、しかもドレッシングが「オイルにする?フレンチマスタードにする?」と2種から選べる。
オイルを選んだが、かなり美味しかった。というか、今回のロンドンで食べた粉系(パンやパイ)の中で最高の味だった。美味しいもの、あるよ、ロンドン!一緒に頼んだカフェラテも、チェーンのシアトル系より美味しく感じた。ここはおすすめ!
※調べたら、このデリはもう閉店していて(2019年7月時点)残念…でも、お店の数が増えていたので、また行かないといけない理由ができたっw

テムズ川の景色をたっぷり堪能

乗り物好きな私は、旅先であらゆる交通機関を試してみないと気がすまない。川の街、ロンドンではテムズ川を往来するボートに乗ると決めていた。

ボートのルートは様々で、複数の船舶会社が運営しているため、ロンドン交通局の公式HPで確認要。観光客にはロンドンアイの真下まで行ってくれるコースもある。

有名な建物が次々に現れる

サマーセットハウスの近所にはエンバンクメント・ピアという船着場があり、そこから西へ行く船が出ている。これに乗車した。

料金は£5強だった気がするが、オイスターカードの割引で安くなったので、本当はもう少しかかるはず。移動手段としては決してお得とは言いがたいが、これで通勤している人もいるのだそうだ。気持ち良さそう♪

船窓より、川向こうに見えるロンドン・アイ。申し訳ないが、全く興味がないので一生乗ることはないだろう。

はっきり言って景観にはミスマッチ極まりないと思う。夜見たらきれいだという意見もあるだろうが、国会議事堂やビッグベンなど、古色蒼然とした建築群と並んでこれが目に入ると興醒めしてしまう。

とんがってるのは「ガーキン」と呼ばれるビル。シティにあると聞いたが、ロンドンのあちこちから見える。ちなみにガーキンとは、きゅうりのピクルス。そういえば、形が似ている(笑)
やがて、おなじみビッグベンが見えてきた。そして、その後ろが国会議事堂。

よく見たら、ビッグベンが傾いてるのがわかるだろうか。いまこの傾斜が問題になっていて、ピサの斜塔みたいになるにはまだ時間がかかるが、そのうちもっと傾くらしい。古い塔は仕方がないんだろうな・・・

船から下りて、川沿いを左に行けば、次の目的地「テートブリテン」が見えてくる。初日に行った「テートモダン」と対を成すイギリス芸術の優である。モダンが名の通り現代芸術を中心とするのに対し、こちらはターナーを初めとする中期イギリスのアートが集約されている。

今日は昼下がりから夕方まで、ここでゆったりと過ごす予定だ。