日本一の強酸性スパ「新玉川温泉」へ

バスで1時間半、山の中の秘湯へ

田沢湖からバスで「玉川温泉」へ向かう。秋田には素晴らしい温泉が多数あり、最初は白濁青み湯の「乳頭温泉」もいいかなと思ったけれど、どうせここまで来たんだし、田沢湖から公共交通機関で行ける最も奥深い温泉を目指すことにした。それが「玉川温泉」である。

場所は赤い丸の部分。紫の丸が角館で、オレンジの丸が田沢湖駅。田沢湖からはぐーんと北上して「日本の背骨」と言われる奥羽山脈に入り込む。

ここらは「八幡平(はちまんたい)」と呼ばれるエリアで、隣接する岩手県にも八幡平市という市がある。一帯が「十和田八幡平国立公園」に指定されており、どっぷり濃厚な自然を楽しめる景勝地だ。ただし冬は雪に埋まるので、春から秋までが観光シーズンである。

ちなみに地図には「新玉川温泉」と書いてあるが、ここは古くから湯治の宿として知られる「玉川温泉」の新館である。どちらも湯は同じで、玉川温泉の方が歩いて15分ほど奥地になる。

「新玉川温泉」へのアクセスは?

ここへ到達するには、車が一般的。もし私のように公共交通機関を利用するなら、JR田沢湖駅(または田沢湖バス停)から羽後交通の路線バスを利用する。本数が少ないし、冬には玉川温泉まで行かないので注意。

時刻表もよく変更されるので、羽後交通のサイト>路線バス>路線から探す>大仙・泉北>(急行)八幡平線または(急行)玉川線または(急行)新玉川線 のダイヤをチェック。田沢湖の乗り場は「田沢湖レイクハウス」前にある。

バスの所要時間は1時間半。ひっぇぇ~遠い。そして料金は1350円。高いw でも、さすがに山の中は紅葉が進んでいて、こんな景色が眺められる。ここらは昭和の頃、玉川ダムと発電所ができたことで開けた道路だ。その昔はひっそりと特別な湯で病気を治しに来る秘湯だったのである。

「新玉川温泉」の画像検索結果

※公式サイトより

着いた~!森の中に忽然と大きな建物が現れ、バスがぐるーっとホテル前のロータリーを回って正面に横付けされる。ホテル専用バス停だ。まあ、他に建物などない山の中。到着を待っていた従業員さんたちに出迎えられ、法被を着たドアマンが荷物を中へ運んでくださった。建物も立派でおしゃれだし、なんか想像していた温泉宿と違うw

こんな山の中なのに賑わっている

中に入ると、さらに思っていたのと違う。昭和の匂いがしない、都会のホテルのようなロビー。ただし、チェックインが激混みで高齢者率が異様に高いw しばらく待ってようやくチェックイン。館内の案内からお風呂の使い方など、まあ長い長い説明があって、その後に夕食の時間をいくつかの時間帯から予約した。

なお、午後4時から温泉の正しい入り方を学べる「温泉説明会」があるとのことだったが、始まるまでに15分しかなかったので休憩する方を選んだ。さすがに今日は疲れたよ。

私が泊ったのはA館という洋室のホテル棟。フロントから温泉に向かう途中に廊下があり、庭を突っ切った先にある。庭も広々として素敵。田舎の湯けむり宿を想像してたけど、めっちゃ近代的。A館の一階にはコインランドリーもあって、長期滞在の人にも便利だ。

お部屋もきれい、気分上がる

こちら、お部屋。廊下もガラス張りで山の風景が見えるし、部屋の窓からも山が見える。見晴らしは抜群。そしてきれい。豪華じゃないけど、こざっぱりしてアメニティもあれこれ揃っている。快適、快適。

何が嬉しいって、加湿器はいいよね。ここらはもう寒いので暖房は必須。加湿器がないと喘息持ちの私には辛い。おかげで喉が痛くならなかった。

pHは塩酸並み「玉川の湯」とは

ちょっと休憩して元気が出たので、夕食前に温泉へGOである。ここの温泉は、ちょっと変わっているので、まずは泉質を説明しておこう。

とりあえずpH1.1で日本一の強酸性、ということがいちばんの特徴。どのくらい強いのかというと、塩酸に匹敵するらしい。1円玉が1週間で消滅するという強酸で有名な草津の湯でもpH2前後なので、どれだけ強いのかわかろうというもの。

入浴方法には十分な注意を

そう聞くと「ひぇぇ溶ける」と思うけど(溶けてほしいけどな!w)もちろん浸かるくらいでは溶けはしない。ただ、肌には非常に刺激が強いため、入り方に注意が必要だ。まずは絶対に目の中に入れない!痛くて死ぬるぞ。そして、長く浸からない。薄めたお湯と源泉があるので、まずは薄めた湯で慣らしてから短時間だけ源泉に浸かり、最後は真水で洗い流す。じゃないと翌日の肌が悲惨なことになる。普通の温泉と違う事だけは頭に入れておこう。

大浴場へ向かう前に、まずはクロゼットを開けよう。このような湯けむりセットが入っている。お風呂用のバッグまでついている。これは親切。大浴場の横にある岩盤浴を利用したい人は、フロントで作務衣とタオル(有料)を借りるか、自前のジャージ上下と床に敷くバスタオルを持参すべし。上下着衣でないと入れないし、宿のタオルは変色防止のため使用を禁止されている。朝~夕方まで予約制で、夜は予約なしでOK。ただしけっこう混んでるらしい。私は湯あたりするのでパス。

さあ、日本一の酸性泉へ!

いよいよ噂に聞こえた「玉川の湯」へ。旧館と湯の質は同じだが、こちらは近代的なスパリゾート仕様になっている。ど平日だが、脱衣所にはけっこうな人がいた。こんな山奥の温泉にみんな来るのね。土日は予約が取れないというのも納得。

1時間ではちょっと無理

なんと全部の湯を堪能するのに1時間半もかかってしまった。酸性の刺激を緩めるため、全体的に温度が低かったのもあるし、ゆったりしてしまう独特のムードがあった。面積はちょっとした体育館ぐらいの広さだろうか。中に入った瞬間、圧倒的な「木材」のパワーに驚く。

※公式サイトより

秋田杉が浴槽から天井までふんだんに使われ、湯婆婆が出てきそうな雰囲気だ。その木の御殿の真ん中に、どーんと構える大浴槽。これが「源泉100%」の強酸温泉。二つに仕切られているが、中の湯は同じだと思う。いきなりこれに入ってはいけない。まずは、かかり湯から洗い場へ。しっかり体を洗浄しておく。

次に目指すのが、低濃度の浴槽。向かって左側に4種ほどある。最初は「弱酸性」の湯から入ることをおすすめする。その後、その並びにある各種「50%」で肌を慣らす。この50%だけでも、かなり効果がある。特にジャグジーのような泡立つ浴槽は筋肉疲労によく効いた。バスに揺られた腰が軽くなった気がする。

源泉100%を体験、ぴりぴり!

50%の湯で肌を慣らして、いよいよ源泉へ。源泉と聞くと税金を連想してしまう因果な職業病を振り払い、そっと浴槽へ。お湯の肌当たりはそこまで変わった感じはない。アルカリ温泉のようなぬるぬる感もなく、さらっとして普通のお湯のようだが…

来た!口に出しにくい部分がぴりぴりするw きっとこれは傷がある人にはつらいはず。顔剃った後は湯がかからないよう注意すべし。そっと刺激しないよう、おとなしく浸かること5分。用心のため、いったん洗い流して蒸し風呂へ。秋田杉で作った箱型の蒸し風呂。顔が出ているのでいくらでも入っていられる。これを2セットほど繰り返した。

露天風呂は森林浴もできる

露天風呂にも、もちろん入った。大浴場から短い廊下を歩くので、ちょっと寒いけど見晴らしが素晴らしい。浴槽の目の前に池が設えてあり、その向こうは原生林である。風が濃厚なフィトンチッドを運んでくる。ザ・森林浴の湯。ここには翌朝も入浴した。朝の空気は本当に格別。人が少なくて貸し切り状態なのも最高!

なお、大浴場の中に飲泉コーナーもある。酸が強いので、少量を真水で薄めて飲むのだが、これがまあ酸っぱいこと。30%くらいに割って砂糖なしのレモネードみたいな味。源泉もちらっと舐めてみたけど、口が梅干しになる酸味と苦味。さすが田沢湖の生態系を変えてしまった「玉川毒(ひどい言われよう)」である。

「新玉川温泉」公式ウェブサイト