角館の名物「樺細工」と「あかそば」

角館樺細工伝承館へ

角館の名物は、武家屋敷だけではない。実はみんなが一度は目にしたことがあるであろう、有名な伝統工芸品のふるさとでもある。ちょっと渋いが味わいのある「樺細工」のあれこれを学ぶべく、観光エリアの中心にある「角館樺細工伝承館」へやってきた。素晴らしく立派なたたずまいだ。角館の古い建築様式を現代にいかした建物だという。

桜の木の皮で作った伝統工芸品

この伝承館ができたのは、昭和53年9月。全国の伝統産業会館の中では3番目に古い。きっとその頃は今よりも樺細工は生活になじんでいただろう。子どものころ、たいていお金持ちの家の茶筒は樺細工だった。

さて、ここで「樺細工ってなあに」とおっしゃるヤング(死語)のために解説すると、樺細工とはヤマザクラ類の樹皮を用いて作られる工芸品の総称。樺というと白樺を連想する人も多いと思うが、なんで樺細工と呼ばれるようになったかは諸説あり、角館では昔は桜のことを「サクラカバ」と呼んでいたのが、今では桜皮になってしまったそうだ。

「樺細工」と言えば木の皮にシュッと線が入った、いかにも桜の樹皮柄が一般的ではるが、ハイクラスなものになると、見たこともないような模様のものがある。これすべて木の皮だけで作ったものだ。あんまり人がいなくて寂し気な館内ではあるが、じっくり見てみると味わい深いものがある。

角館の伝統的な生活木工品も

ちなみに工法には「木地もの」「型もの」「たたみもの」の3種があり、それぞれ全くテイストが違う。また、おなじみの茶筒や茶櫃だけでなく、文箱、茶だんす、ブローチ、タイピンなど加工品のバラエティも豊かだ。

これは樺細工なのかよくわからなかったけれど、角館の雪道で使われていた立派な「そり」が展示されている。雪国ならではの道具である。

こちらは伝統的な雪下駄や雪靴。西日本の人間には新鮮。このような生活道具の展示も興味深い。時間があればぜひ見学を。

「そば切り 長助」にてランチ

到着して最初のランチは郷土料理の「お狩場焼き」にしようと思っていたが、フランス在住角館出身者(今回の師匠)が「そば切り長助さ行げ。んめぇから」としきりに言うので、それほどおすすめならとやってきた。メインストリートの1本裏道に当たり、探さないと見つからない。

珍しい「あかそば」を試してみる

平日の正午ごろ。街自体はあんまりにぎわってない雰囲気だったが、ここはひっきりなしに客が来る。地元民の利用が多いのだろう。手前にテーブル席が4つ、奥が座敷。運よく待たずに入れた。まずは暖かいそば茶をいただきながら、メニューを吟味。

ごはん類とのセットものや甘味つきのものもあるが、せっかく手打ち蕎麦屋に来たのだから、冷たい蕎麦をいただくことにした。珍しい「あかそば」というものが目についたので、「十割そば 二種食べ比べ」を注文。1210円也。

ほんのりピンクがかってやさしい味

「あかそば」とは、赤い花を咲かせる「高嶺ルビー」という珍しい品種から作られる。写真左が「あかそば」、右が従来の品種である。色がわずかにピンクがかっているのがわかるだろうか。

お味の方は、普通の蕎麦よりやわらかめで甘みがある。ふわっとやさしい感じ。普通のお蕎麦の方は、しゃっきりつるつる。食べてみると、はっきり違いが判る。なお、つゆは思ったより薄味で、東北だとしょっぱいのではというイメージが払拭された。

こちらは、蕎麦についてくる小皿の一品。そばがきの揚げたもの。お塩でいただく。日本酒が恋しくなる味だったが、まだ先は長いのでやめておいた。

観光地でなんちゃって郷土料理もいいけれど、きちんと美味しいものを食べたい人にはおすすめの一軒である。