秋田市内観光、どこ行く?
秋田市内って、意外と観光名所が少ないと気づいた。あるにはあるけど、「市内っていうより郊外だよね?」という場所に点在していて、公共交通機関でさくっと半日で回れる場所が限られてくる。ここでは市内中心地、近隣にあって歩いて回れる3か所をご紹介。さっと回るなら1時間半~じっくり見ても3時間あれば足りるので、駆け足観光でも十分に楽しめる。
位置としては、秋田駅からまっすぐ西へ。市内を縦断する大きな川を越えて、南側が川反(かわばた)と呼ばれる飲み屋街、道向こうの北側は商業地域。紫の丸が「赤れんが郷土館」で、オレンジの丸が「ねぶり流し館・金子住宅」だ。
明治が薫る「赤れんが郷土館」
最初に訪れたのが「赤れんが郷土館」。正式な名前は「赤れんが郷土館・勝平得之(かつひらとくし)記念館」である。勝平さんは秋田の版画家。ついでに言うと、「関谷四郎記念室」というのも内部にあるんだけど、それは名称に反映されていない。ややこしいので「赤れんが郷土館」と呼ぶことにする。
これが建物。予想していたより、はるかに立派である。赤れんが館・新館・収蔵庫の3つの建物から成り、赤れんが館は旧秋田銀行本店として明治42年に着工、同45年に完成した建物。その当時、これがどーんと建ってたら、そりゃー通りかかった人は驚くやろう。
昭和56年(1981年)に秋田市に寄贈され、現在は国の重要文化財に指定されている。入る前にじっくり外装の見事さを堪能してほしい。磁器タイルと赤れんがのコントラストが素晴らしい。外国人技師によるものかと思いきや、当時の秋田県の技師、山口直昭が手がけたもので、ルネサンス様式を取り入れているそうだ。わーっと感動しながら内部へ。
一階は秋田銀行の往時を彷彿とさせる、クラシックな造り。入って右側に受付があり、入場券を購入する。私は「ねぶり流し館」と「旧金子家住宅」も行く予定だったので、3館共通券を買った。大人260円。翌日以降も使用できる。
古き良き時代が集約された建物にうっとりしながら見学していると、旧金庫室にたどり着いた。当時の銀行はこんな金庫を使用していたのね。部屋自体も鋼鉄の扉、鉄格子など、堅牢に作ってあり、そこにこの大金庫が鎮座している。どんな方々の財産を守ってきたのか。語りかけてくるような趣がある。
2階に上がる階段が王宮っぽい!白大理石なんだそうだ。スニーカーの足で上がってごめんね。これ、今じゃ誰も作ろうなんて思わないよね。このアーチも素晴らしくて、建築好きな人ならひゃーひゃー言いそう。
天井の石こうレリーフも見てね。すごいわ、どこ見ても装飾がゴージャス。地震で壊れないように祈る。たぶんもうこんな建物は作れない。
2階の回廊から見下ろしたホール。かつて営業室だった場所で、トラス工法を用いて広大な吹き抜け空間を構成してある。内部の設計は星野男三郎氏。これも当時の日本人。いったいどれだけ勉強したんだろう。
インテリアで目を引くのが暖炉。全部で3つあり、それぞれ素敵なデザイン。この部屋はクロスが素晴らしかった。下側の茶色は柿渋染めで月桂冠が描かれている。どんだけ粋やねん、明治。うっとり存分に楽しんだ。
「ねぶり流し館」と「旧金子家住宅」
「赤れんが郷土館」を出て「ねぶり流し館」へ。ここは正式名称「秋田市民俗芸能伝承館」。平成4年に「赤れんが郷土館」の分館として誕生した。一階には館内からつながる「旧金子家住宅」がある。金子家には外から入れないので、いったん館内へ入ろう。
竿灯の実演が素晴らしい「ねぶり流し館」
重要無形民俗文化財「秋田竿灯祭り」は、毎年8月3日~6日に秋田市で行われる。青森のねぶた祭り、仙台の七夕まつりと並んで東北三大祭りの1つで、提灯をつけた長い竿「竿灯」は稲穂と米俵を表しており、おでこや腰、肩などに竿を乗せて、豊作を祈る。
その「秋田竿灯祭り」をはじめ、秋田県の民俗行事や芸能の保存伝承を目的として作られたのが、この「ねぶり流し館」。「ねぶり流し」とは「眠り流し」が変化した言葉で、眠っている間にとりつく悪霊を祓うという意味なんだそう。
一階の展示ホールに入ると、めちゃくちゃ天井が高いことに驚く。竿灯が展示してあるので、そのためかと思っていたが、後で理由がわかった。ここで竿灯の実演があるのだ。これを見逃してはいけない。
幸運なことに迫力の実演を間近で
2階から上の民俗行事の展示だけ見て帰ろうとしたら、受付の方が「今から竿灯やりますよ!見て行って」と呼び止めてくださった。ありがとう!お陰でうおお~というものが見られた。実演は4月~10月までの土・日・祝日、午後1時半2時10分に行われる。なんてナイスタイミングだ、私。
この日は子供たちのグループが来ていて、お兄さん二人が交代で説明しながら技を見せていく。子どもも地元の子だな、「どっこいしょ~、どっこいしょ!」と、元気な掛け声がかかる。みんないい子だな!
「ここは天井が低いから」と、限界まで竿を継ぎ足してくださった。竿の途中、黒いところが見えるだろうか。あそこから下は50㎝くらいの竿を継ぎ足して長くしていくのだ。どうも秋田の男の子にとっては大きい竿灯をいかに高く、かっこよく掲げるかが男前度に直結するようで、子供用からステップアップして腕を磨くらしい。いつか本物の祭りを見てみたいな。
その他の展示はがっつり昭和w
ちなみに2階から上の展示コーナーは、懐かしい昭和の世界。秋田県に伝承されている民族文化が細かく展示されている。雪深く交通の不便な土地柄だけあって、ちょっと離れた集落でも風習が違う。民謡の宝庫というのも、そういう理由があるのかもしれない。
古い建物の美しさを堪能「旧金子家住宅」
「ねぶり流し館」の一階から通路を通って「旧金子家住宅」へ。これは表から見たところだけど、実際は横手の通用口からお邪魔する。ここが思いのほかドラマチックだった。
入ると、広々とした土間が広がる。これでもうノックアウト。実は私は大正時代に建てられた旧家で幼少時代を過ごしたため、このムードが懐かしくて泣きそうになるのだ。残念ながら育った家は取り壊されたが、こういう梁のしっかりした建築は大切に保存していただきたいものである。
この蔵のエレガントさはすごい
土間の右手にどーんと構える「土蔵」。手前は吹き抜けになっていて、土蔵の中には2階がある。このデザインの優雅な事よ。中に入ってみよう。
中は板張りのホールで、展示会などに貸し出しもしているそうな。こりゃかっこいいわ。江戸時代後期のものらしいけど、びくともしていない。
昭和まで実際に店舗だったそうな
金子家は江戸後期から質屋・古着商いをしていた家で、明治初期に呉服や太物(綿・麻)の卸を始めた。昭和50年まではこの店先で商いが行われており、今もその当時のままに時が止まっている。
建物のあちこちに置かれた古い家具やランプ、女中部屋に上がる急な階段など、今では朝ドラの世界になってしまった光景がここにある。ぜひ秋田に行ったらじっくりと江戸から昭和を閉じ込めた空間を楽しんでほしい。