秋の角館、武家屋敷をめぐる

角館最古の武家屋敷「石黒家」へ

エアポートライナーのナイスミドルに武家屋敷エリア北側、最も有名な「青柳家」の前で降ろしてもらい、いよいよ角館観光スタート。ここから南下しながら観光するプランだ。

よく「テレビで見たときはきれいだったけど、実物はちょっとね」という観光地は多いが、角館は想像より美しい。そして意外なくらい道幅が広い。昔の区割りだともう少し狭いのではと思っていたけど、広々とした道がまっすぐに伸び、その両側に黒塀の(これは美観条例があるんだろうな)お屋敷がずら~っと並ぶ。どのお宅のお庭も立派な樹木が茂っていて壮観である。さて、まずは北端の「石黒家」からお訪ねしてみよう。

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ご家族がまだお住まいの家

こちらが石黒への表門。現在も直系の家族が住み続けている、角館で最も古い武家屋敷。奥の受付で入場料(400円)を払うと、係の方がひと組ずつ母屋の案内をしてくださる。人が少ない日でよかった。

石黒家は久保田藩(秋田藩ともいう)の藩主であった佐竹北家の家臣で、主に財政担当の役職だったお家柄。このお屋敷は1853年の転売記録が残っていて、その頃からほぼ間取りが変わっていないそう。

この欄間が凝っている。縁起の良い亀の透かし彫りが、次の間の壁に投影されるように細工されているそうだ。インテリアデザイナーがおったんだな!

石黒家のレディースがお召しになったお着物。シミもなく良い生地なのがわかる。かな~り金持ちの衣装であることは間違いない。

リビングルーム。玄関から土間に入り、その正面にある。囲炉裏の煙を逃がす工夫もされていて、居心地のよさそうな空間だ。

奥に行くと別棟の展示室が

母屋の説明が終わったら、靴をはいて奥の展示室へ向かう。その途中、角館の情報誌「Sぷれっそ」を入手。実は私の知人である角館出身フランス在住のマダムが、この本に寄稿されているのだ。今回の旅でも遠いフランスからあれこれと情報をいただきお世話になった。

さて、石黒家の展示室。ちょっとマニアックで申し訳ないが、角館と言って私の頭に真っ先に浮かぶのが「小田野直武」である。江戸時代における絵のジャンルに「秋田蘭画」というものがあり、日本画を学んでいた美大時代の画集で知った。西洋画と日本画の和洋折衷アートなのだが、この久保田藩で興った。その旗手が小田野直武である。

小田野直武は、平賀源内から西洋画を学び、解体新書の絵を描いた人。それ聞いただけで映画が1本撮れそうな気がする。この石黒家にも展示があったので、かぶりつくように眺める。この時代に生きてたら、間違いなく弟子入りしている。

石黒家のお庭にある立派なもみの木。推定樹齢は300年だそうだ。赤穂浪士が討ち入りした時代。いろんなことを知ってそうだね。

最も有名で広大な「青柳家」へ

タクシーを降りた場所、青柳家へ戻る。角館の武家屋敷で、いちばんメジャーなのはこの青柳家だろう。とにかく広い。3000坪あるらしい。中にはちょっとした博物館やレストランもあって、観光客ウェルカムな武家屋敷。もし初めての角館で「6軒全部は無理だわ」と言う場合は、ここプラス1~2軒でいいんじゃなかろうか。

黒塀に茅葺の表門、母屋が奥にある造り。この門は「薬医門(やくいもん)」といって、上級武士にしか許されていなかった。この門を入って右側に券売所があり、500円を入って入場。キャリーバッグも預かっていただける。

展示コーナーが作りこまれている

ここはきちんと順路が作られ、パンフレットを見ながら進むとスムーズに見学できる。下の写真は昔の台所。立派な塗りの道具が並んでいる。奥が竈。

武具や生活道具の資料館が作られており、このような夜着も展示されていた。「かいまき布団じゃん」と思うかもしれないが、当時の綿は超高級品。脱いだ着物をかけて寝ていたくらいなんで、これはセレブな寝具に違いない。

お武家さんなので、武器蔵にはこのようなお宝も代々のものがある。刀も程度のよい保存状態で多数残されていて、位の高さが伺える。

よく手入れされたお庭。本物の刀や槍に触れたり、兜をかぶってみたり、駕籠かきができたり、無料体験メニューが豊富。ガイドツアーやきものレンタル(400円、安い!)、鎧の着用体験など有料メニューも多数用意されている。

最大の目的は「解体新書記念館」

私の目がキラーン✨と光ったら、そこは「解体新書記念館」。門の前で「ターヘルアナトミア!」と呪文を唱えるとドアが開く(嘘ですごめんなさい)

さっきの石黒家でも展示のあった、解体新書。その絵師を務めた小田野直武は、この青柳家と親戚関係に当たる。秋田蘭画と解体新書に興味のある人にはたまらない。平賀源内ファンである私には、さらなる喜び♡

この記念館の外には小田野直武像もある。少ない情報でよくこんな緻密な絵を描かれましたねと話しかけて、蜘蛛の巣を払ってきた。尊敬してますよ~

お食事やお茶、買い物もできる

青柳家には3か所の飲食施設がある。ここは喫茶の「茶寮あおやぎ」。稲庭うどんを食べたい人には「森の食彩館」、コーヒーがメインの「ハイカラ館」もある。ただし、飲食だけでの利用は不可。入場料500円を払って中へ入る必要がある。

面白かったのは、このような生活道具の展示。今と変わらないものもあれば、これ何?というようなものも。

この大きな貝殻は、秋田の郷土料理「貝焼き(かやき)」に使用されるもの。今もお店では貝に料理が乗って出てくる。奥のハエトリ罠も気になるぜw

お土産どころなんかもあったりして、あれこれ楽しめる青柳家。ここから南下して、武家屋敷街の中央エリアへ。